自由と愛国

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「リバティ」と「フリーダム」

板垣退助を表す言葉として、一番最初に浮かぶ言葉は何でしょうか。

「自由民権」

あるいは

「自由」

という言葉を挙げる人が多いのでないでしょうか。

間違いではありませんが、板垣退助を知る上で「自由」という言葉から研究をしてしまうと必ず袋小路に入り込んで答えには到達することは出来ません。

板垣は生涯をかけて、何のために「自由」を提唱したのでしょうか。

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参議時代の板垣退助

板垣退助の生涯を一言で表す言葉は?

板垣退助を表す言葉として、もうひとつ重要な言葉があります。

それは「愛国」です。

板垣が生涯をかけて一度もブレたことが無いのが「尊皇」であり「愛国」なのです。

板垣が征韓論を唱え、敗れて下野してから真っ先に作ったのが「愛国公党」であり、これが日本初の政治政党であると言われています。
「愛国公党」を結成して5日後に、愛国公党は「民撰議院設立」の建白(申し立て)書を左院に提出します。
あたかも「民撰議院設立建白書」を提出するために作った団体のように思えてしまいます。

ここで述べられている「民撰議院」というのが、今日の「議院内閣制度」のことで、退助の言う「自由」というのは各々が愛国心に裏打ちされた自由でなければならないのです。

かつては、誰もそのことを説明されなくても分かっていたことでした。

しかし近年は、板垣退助を「自由民権運動の指導者」と説明すると、ネタでも何でもなく「自由に何んでもやっていい権利を主張する社会運動をした指導者」だと誤解する人まで出る始末ですから、正しく説明しなければなりません。

板垣退助にとって「自由(な議論)」とは「愛国」を達成するための手段でしかありません。

「愛国」とは国体を護持し、郷土と文化に誇りを持ち、国民の生活を守ることです。

その意味で、板垣退助を「自由民権運動の指導者」と説明してしまうと間違いではありませんが、本当の彼の人間像に迫ることはできません。それだけでは、彼の幾多の行動を理解できないでしょう。土佐藩が一度も賊軍にならなかったのは単なる偶然でもラッキーだった訳でもありません。そこには、幾多の積み重ねと幾人もの努力があり、その為に身命を投げ打った人々がいるからです。

しかし「自由」という言葉から板垣退助を研究していたなら、永遠に「征韓論争」にも退助の人間像にも辿りつくことが出来ないでしょう。

司馬遼太郎による論評の不合理性

司馬遼太郎という歴史小説家は、板垣退助の人間像に永遠に辿りつけない袋小路に入り込んでしまった一人です。

忌憚なく申し上げると、司馬は「板垣は大いなる失敗者であった…」という文章に続けて「革命主義者」であったのに「皇室の権威にすがったり」と首尾一貫していないと散々たる酷評です。

しかし、彼の評論は正しいのでしょうか?

板垣退助を「革命主義者」という観点で分析しようとすれば必ず失敗します。

なぜなら彼は「革命主義者」ではないからです。「革命主義者」でもないのに「革命主義者」とレッテルを貼られ、「革命主義者らしからぬ…」云々と論評されてもいい迷惑です。

そもそも「革命主義者」と「勤皇から一度もブレたことがない男」という時点で、全く違う人間像に無理矢理押し込めようとして破綻している解釈な訳です。
かつて退助を岐阜で襲撃したテロリスト・相原尚褧もそう誤解した一人でした。

板垣退助の作った政党名に総ての答えがある

党を作るにはその趣意を説明し、それを一言で表したものが採用されます。
なぜなら、趣意を説明され賛同して党員となったのに、全くかけ離れたネーミングだったら皆「え?」となるでしょう。
これはいつの時代でもそうです。

退助は「愛国公党」を初めに作り、そして「自由党」を作りますがまた「愛国公党」を再結成し、「愛国社」に変え「国会期成同盟」に変え、また「自由党」を再結成したりします。

繰り返し現れるのが「愛国」と「自由」です。

そして、「愛国」が先にあって「自由」を手段として行使していく訳です。

その意味で、本会では今となっては誤解を生じてしまう可能性のある「自由民権運動の指導者」という言葉を一旦、下におろして「真の愛国者であり続けた板垣退助像」にせまっていきたいと考えております。
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板垣退助をより深く理解していただける端緒となれば幸甚に耐えません。


甲州勝沼の合戦より149年目の平成29年3月6日記す(文責 達観処士)


  • 最終更新:2017-12-13 20:27:40

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